セクハラの基礎知識

 

「セクハラ」とは「セクシャル・ハラスメント」のことです。既に世間で広く認識されている言葉です。主に「相手のいやがる性的な発言や行動」と定義付けられています。法律面からお話ししますと、1999年に10年ぶりに「男女雇用均等法」が改正されました。その中で、事業主に対する「セクシャル・ハラスメント」防止のための配慮義務が規定されました。これは事業主に対して、初めて「セクハラ防止」のための配慮義務を規定した法律で、これにより企業は禁止規定を設けたり、セクハラ相談窓口を設置する等、「セクハラ対策」にやっと本格的に取り組み始めることになったのです。


しかし、表面化している「セクハラ」事件はごく一部に過ぎません。なぜなら、「セクハラ」が企業内で発生した場合、企業は可能な限り外部に漏れないように内部処理に努力します。当然のことですが、企業にとって「セクハラによる不祥事」はきわめて不名誉なことだからです。
そのような理由で、相談件数よりはるかに多くの「セクハラ」による被害者が発生しているのが現状です。裁判所にまで発展するケースはむしろ例外的な話で、「セクハラ」事件の多くは企業内部で示談等によって密かに処理されているのです。


先にも述べましたように、「セクハラ」は、「相手のいやがる性的な発言や行動」のことです。「男女雇用均等法」では、「職場において行われる性的な言動に対する雇用労働者の対応により労働者がその労働条件につき、不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定しています。
ここで重要なのは、あくまでも「相手のいやがる性的な発言や行動」ですから、普段の何気ない言動や行動が、「セクハラ」とされてしまう可能性があるのです。

 

 

 では、何が「セクハラ」にあたるのでしょうか?

 

もう少し詳しくお話ししましょう。
「セクハラ」とは、「職場において行われる性的な言動に対する雇用労働者の対応により労働者がその労働条件につき、不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」です。

ここで言う「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所のことです。ですから、業務を遂行する場所であれば事業所内のみではなく、出張先や取引先等も広い範囲で職場に含まれます。また必ずしも勤務時間内である必要ありません。例えば勤務時間外の「飲み会、忘年会」であったとしても、勤務の延長としてみなされる場合があります。
また「性的な言動」とは、性的な「発言」と「行動」のことです。

 

具体的には、次にあげるような事例が「セクハラにあたり得る」と、「セクハラ防止」のために規定された「人事院規則10-10」で定められています。

 

 発言・・・性的な関心、欲求に基づくもの

・スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること。
・聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと。
・体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」、「もう更年期か」などと言うこと。
・性的な経験や性生活について質問すること。
・性的な噂を立てたり、性的なからかいの対象とすること。

 

 発言・・・性別により差別しようとする意識等に基づくもの

・「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」、「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること。

・「男の子、女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること。
 

 行動・・・性的な関心、欲求に基づくもの

・ヌードポスター等を職場に貼ること。
・雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せたり、読んだりすること。
・身体を執拗に眺め回すこと。
・食事やデートにしつこく誘うこと。
・性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・E メールを送ること。
・身体に不必要に接触すること。
・浴室や更衣室等をのぞき見すること。
・性的な関係を強要すること。

 

 行動・・・性別により差別しようとする意識等に基づくもの

・女性であるというだけで職場でお茶くみ、掃除、私用等を強要すること。
・カラオケでのデュエットを強要すること。
・酒席で、上司の側に座席を指定したり、お酌やチークダンス等を強要すること。

 

 豆知識 : 「セクハラ」の分類について

 

セクハラは、その内容により「対価型」「環境型」に分類されます。


「対価型セクハラ」とは・・・
「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動」に対する対応により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受ける形態の「セクハラ」のことをいいます。
例えば上司が部下やパート、派遣社員等に対し、性的関係を求めたがこれに応じなかったため、解雇、配置転換をする・・・等がこれにあてはまります。


「環境型セクハラ」とは・・・
「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動」により、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、その労働者が就業する上で看過できない程度に支障が生じる・・・等がこれにあてはまります。
例えば・・・
・上司が部下やパート、派遣社員等の肩や腰に度々触れるなどの「身体的接触型」
・性的な噂話を流すなどの「発言型」
・PCのデスクトップ上にヌードなどの卑猥な画像を利用するなどの「視覚型」・・・等がその事例です。

   

 「セクハラ」かどうかの判断基準は?

 

「セクハラ」かどうかの判断基準は、「相手の意に反する」ものであったか、「就業環境を悪化させる」ものであったかが重要な判断基準となります。
ここで言う「相手の意に反する言動」とは、「相手が望まない、相手が不快に感じる言動」です。もし仮に相手が「拒否しなかった」、または「拒否するような態度を取らなかった」としても、その言動が「相手の望まない言動」である場合「セクハラ」となることがあります。

特にいわゆる企業内の組織において、「人間関係」を円滑にしようとする気持ちから、仮に「自分の意に反する言動」をされたとしても、明確な拒否の意思表示をしない事が往々にしてあります。
しかも「相手の意に反する」ものであったか、「就業環境を悪化させる」ものであったかはあくまでも相手側の「受け取り方」次第です。同じ事をしても「受け取り方」によって反応も人それぞれということです。

 

ですから、自分では相手が応じているように見えても、ある日突然、相手から「それはセクハラ」!ということになってしまうことも十分にあり得るのです。
   

 加害者の法的責任

 加害者の民事上の責任

「セクハラ」の加害者は「不法行為責任」を問われます。

故意または過失によって、他人の権利を侵害し、他人に損害を与えたことにより生じる「損害賠償責任」です。被害者の人格権を侵害したものとして、不法行為に基づく「損害賠償責任」を問われることになります。

 

【根拠法令】

・不法行為責任:民法709条
 

 加害者の刑事上の責任

「セクハラ」は身体的な接触を伴う場合、「公然わいせつ罪」「強制わいせつ罪」に問われる可能性があります。また場合によっては「強姦罪」「傷害罪」「暴行罪」が成立する場合があります。仮に身体接触がない場合でも、「名誉棄損罪」「侮辱罪」が成立する場合があります。

 

つまり、軽い気持ちで行った言動によって、「セクハラ」の加害者は「犯罪者」になってしまうどころか、これまで「築き上げてきた全て」を失う可能性をはらんでいるのです。
 

 企業の民事上の責任

「セクハラ」は、ただ従業員同士の個人間だけの問題ではありません。

当然「セクハラ」を放置した企業も責任を問われる可能性があります。「雇い主」には、雇用する労働者が仕事をするうえで、生命・健康を害することが無いように配慮する義務があります。また、労働者の働きやすい環境づくりに配慮する義務もあるのです。
当然、職場内に「セクハラ」が生じた場合、迅速かつ適切に対応する義務もあるのです。従って、「セクハラ」を認知していたにもかかわらず、放置したような場合には、この義務を怠ったものとして、「債務不履行責任」を負うことがあります。

 

【根拠法令】
・使用者責任:民法715条   ・職場環境配慮義務違反(債務不履行責任):民法415条

 

 被害者になって泣かないためには・・・

 一番大切なのは「毅然」とした態度です。

会社の中では様々な危険な誘惑があります。「飲食」「デート」、さらには「性的誘い」等々・・・これらを受けたとき、ついつい後々の業務、社内における自分の処遇等に与える影響を考え、曖昧な対応をしてしまう・・・。往々にしてあることです。ですがこれではいけません。はっきりと毅然と「NO」と言えなければ、最終的には自分自身が一番傷付いてしまうことになるのです。

 

 それでも「セクハラ」を受けていると感じたら ・・・。

一番してはいけないこと・・・それは「泣き寝入り」です。実際は「セクハラ」をされて「泣き寝入り」する人は多いです。今は以前と異なり加害者はもちろん企業の責任も認められています。
「泣き寝入り」せずに、会社に対して労働環境の改善等の適切な処置を求めるのも一つの方法です。
しかし加害者が男性の場合、女性被害者に報復を示唆する等の威嚇し、「口止め」を強いることがあります。実際のところ、これを怖れて会社に相談することを躊躇してしまう女性が多いのです。こうすることによってますます「セクハラ」の実態が見えなくなってしまうのです。

 

 「セクハラ」と戦うための第1歩・・・「セクハラ」の重要な証拠を残しましょう。

「裁判」では、重要なのは客観性のある「証拠」です。

特に「セクハラ」は、当事者2人だけの関係が問題となる場合が殆どです。ですから、当事者の供述以外証拠が残らず、被害者救済の決定力に欠けてしまうことが多いのです。とくに供述は物証ではありませんから、互いに都合の悪いことは言わず、都合のよい事しか言わないのが常です。ですから、第三者を納得させるだけの「説得力のある証拠」を残しておく必要があるのです。

例えば・・・
・「セクハラ」相手からの着信記録、メールの記録
・「セクハラ」相手からの手紙やプレゼント
・「セクハラ」現場の写真、音声、映像記録、目撃証言
・「セクハラ」された日々の記録(日記でもよいでしょう)
・「セクハラ」によって精神的被害を受けた場合の病院の診断書・・・・等々です。

 

可能性のあるものはすべて残しましょう。
一つ一つは小さくても、つながれば大きな証拠になることもあるのです。

 

 「セクハラ」と戦うために次にできること。

自分が「セクハラ」にあっている・・・「できれば誰にも知られたくない」、「もちろん会社にも知られたくない」・・・。普通は誰もがそう考えます。ではどうすればいいのでしょうか?
「セクハラ」を立証するのに十分な「客観的な証拠」が揃ったら、
「内容証明郵便」を加害者に送ってみるのも有効な手段です。


相手方への要求は
・ 現状行っている「セクハラ」をやめること
・ 会社に「セクハラ」被害の申告をする準備のあること
・ 慰謝料請求の可能性のあること
・ 法的手段に訴える可能性のあること・・・・・
 です。


加害者にとっては「セクハラ」の事実が会社に知れ、法的手段に訴えられる・・・。加害者としても絶対に避けたいはずです。「セクハラ」行為がこれにより止まる可能性は高く、この場合なら貴女自身も引き続き会社で働くことができます。

しかし、それでも「セクハラ」行為が止まらない、加害者がどうしても許せない場合は、会社の「セクハラ」相談窓口や労働組合等に相談することもできます。この場合も、直接自分で相談しにくいならば「内容証明郵便」を活用し、会社に対して「セクハラ被害の申告」をするのもよい手段です。

 

更なる法的手段としては、「民事訴訟」で「セクハラ」の加害者と「セクハラ」を放置していた会社双方に対して「損害賠償請求」をすることです。


それだけでなく、「セクハラ」の加害者に「慰謝料請求」したり、「刑事告訴」することまで可能です。
「刑事告訴」することで加害者を厳しく処罰することもできるのです。「慰謝料請求金額」は30万円~300万円の間くらいが相場ですが、あくまでも過去の判例での話です。実際には個々のケースによって「慰謝料請求金額」が変わってくるでしょう。

 

 

また、文面もよく検討しないと、相手方が必要以上に怯えてしまい、逆に「脅迫罪」、「恐喝罪」で訴えられてしまうことさえあります。

 
 

「内容証明郵便」の作成には、十分な法的知識と注意力が必要なのです。

 
 

 

■最後に

被害者が「泣き寝入り」する時代はもう終わっています。「セクハラ」と戦うことができる環境はもう整っていると言ってよいでしょう。
しかし、最後に貴女にお伺いしたいことがあります。それは貴女自身がどこまで望んでいるか・・・?ということなのです。会社に在籍したまま円満な解決を望むのか?それとも退職を覚悟で戦うのか?貴女自身の覚悟が決まらない限り、貴女自身にとっての本当の最良の解決策が見えてはこないのです。どうすればいいよいでしょうか?

 

一緒に考えましょう!

 
※料金表は、こちらのページ(報酬額一覧)をご覧下さい。